kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『川っぺりムコリッタ』監督:荻上直子

〇作品概要

・2022年公開の邦画

荻上直子のオリジナル長編小説を自身で監督・映画化

〇感想・見どころ ※内容含みます

あらすじだけや予告では想像できなかったのだが、本作は「生」と「死」について鮮明に描かれた作品だった。主人公の山田(松山ケンイチ)は、小さい頃に生き別れた父親が死んだと連絡を受け、遺骨を預かることになってしまう。山田の隣人の島田(ムロツヨシ)も、どうやら過去に息子がいたようだ。また、大家の南(三満島ひかり)は数年前に夫を亡くしており、山田の向いに住む溝口(吉岡秀隆)はお墓を売ってる。このように、登場人物全員の身近に「死」が存在しているのだ。そうして、「死」と密接に関わって生きている彼らだからこそ、その生活からは「生きている」ということが強く伝わってくる。例えば、彼らは経済的に裕福とは言えないが故に、庭で野菜を育てて自給自足の生活をしていたり、給料日に何日ぶりのご飯をとても美味しそうに食べる。また、隣人たちとは常に一緒にいるわけではないけど、困った時には黙って互いに助け合いながらなんとか一日一日を生きている。それらのシーンからは、”生命力”のようなものを感じざるを得えなかった。

人はいつか誰もが必ず死ぬわけで、それと同時にその時まで生きなくてはいけないわけでもあるのだが、どれほど辛くて大変なことがあろうと意外と何とかなる!炊き立てのご飯の香り、熱々の湯船に浸かること…そんな些細な幸せの積み重ねで意外と人間って生きていけるものだ…ということを、山田たちの細やかながらもたくさんのぬくもりに溢れている日々が教えてくれた。