kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『FLEE フリー』監督:ヨナス・ポヘール・ラスムセン

〇感想

 アミンたち一家はただ「死にたくない、戦争に行きたくない」という当たり前のことを望んだだけで、生まれた国に住むことができなくなったという事実に衝撃を受けた。そして、どうにか別の国に辿りついても、見つかれば国に連れ戻されるかもしれないという恐怖と常に隣合わせで生きていくしかないという彼らの現実に、とても胸が苦しくなった。

 アミンたちは、長男が先に移住していた安全な場所であるスウェーデンへの移住を計画するも、その移動手段を手配するのに苦労する。その方法というのは、多額の金額を払って、人の密輸入者業者に依頼するという方法だった。その移送方法は想像を絶するもので、アミンたちが海を渡るために体験した恐怖には言葉を失った。この世の中には、あれほど悲惨な体験をしないと安全に生きていける場所に行くことができない人々がいるのかと思うと、この世はなんて不公平で残酷なのだろうと心から思った。

 アミンが体験してきた苦しみを、日本に生まれた私が全てを理解することなんて不可能だろう。しかし、本作を観て「難民」と呼ばれる人たちがなぜ「難民」になったのか、どうやって国を渡ってきたのか、家族のことさえ話すことができない苦しみがどれほどのものなのかを、ほんの少しだけでも知ることができたことは有意義な体験であった。アニメーションだからこその演出や、ストーリー構成、音楽により、とても心深くに訴えかける効果があり、心に残る作品であった。