kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『きっと、うまくいく』監督:ラージクマール・ヒラー二

〇作品概要

・2009年公開のインド映画

・上映時間…171分

・作品概要

 エリート大学ICEに通うランチョー、ファルハーン、ラージューの3人組について描いたコメディ映画。ICEに通う生徒たちは、将来はエンジニアになり良い会社に就職するという親からの期待を背負い、試験に受かるように神頼みしながらでも、必死に学業に励んでいる。そんな彼らの生き方や、試験に受かりさえずればいいという勉強に対する姿勢に対してランチョーは疑問を投げかける。自分がなりたいものになるべきだというランチョーは、ファルハーンとラージューの人生に影響を与えていく。

〇感想・見どころ 

 非常におもしろいコメディ映画だった。メインの3人が、悪知恵を働いたり、ふざけまくったり、下ネタが頻繁に出てきたりするので一見くだらない作品に思えるのだが、その背景には深いメッセージ性が散りばめられていて、そのギャップがよかった。

 主人公たちは大学生だが、既に社会人になった大人が見ても「今の仕事は、本当に自分がやりたかったことだろうか」「自分は後悔しない人生を生きているだろうか」と考えさえられた。彼らをとりまくインドの社会状況は、とりあえず有名大学に行って、有名企業に就職することが勝ち組とされている日本と通じるところがたくさんあり、ラージューたちの心情には自分の学生時代を振り返っても共感することが多く、感情移入しやすかった。また、そんな世の中の仕組みが原因で起こる若者の自殺など、重い社会問題もいくつか取り扱っているが、それでも作品の雰囲気が重くなりすぎず、でもそのメッセージ性はすんなりと心に入ってくるところが絶妙で素晴らしかった。また、作品の中でミュージカル的に何度か出てくる歌は、一度聞いたら耳から離れないものばかりで、その特徴的なリズム感と、歌詞の言葉の響きに虜になり、楽しい気持ちにさせてくれた。

 これまでインド映画を観る機会があまりなかったので、作品の中に出てくるインドの街並みを見るだけでも新鮮でおもしろかった。特にラストシーンに出てくる海か川の風景はとても美しく、イメージするインドの喧騒な街並みとはかけ離れた光景だったため驚いた。そういったインドの魅力を知れたこともよかった。170分という長編なのだが、全くあきずに楽しめるし、観た後に明るく前向きな気持ちにさせてくれる作品であった。