kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『ひらいて』監督:首藤凜

〇作品概要

・2021年公開の邦画

・原作作者…綿矢りさ

〇感想・見どころ ※内容含みます

好きな男の子を手に入れるためならなんだってするし、他人の気持ちはおかまいなし!というスタンスで突っ走る主人公の木村愛(山田杏奈)が、いわゆる”やばい女”すぎてw、次々と予想を超えてくる彼女の行動から目が離せなかった。

木村愛がどれほどやばいかというと、ずっと好意を寄せている同級生のたとえ君(作間龍斗)が、同級生の美雪(芋生悠)と交際していると知った彼女は、あえて美雪に近づいて親しくなり、そのうえ美雪にガチで好きだと告白してキスやそれ以上のことまでしてしまう。そのうえ、たとえ君の前でいきなり制服を脱ぎ始め、どうやったら自分と付き合ってくれるか?と迫る。確実に敵に回したくないタイプの女だ(笑)そんな風に引くほど自己中に生きている愛に一撃を加えたのは、不幸にもたとえ君だった。「なんだかうそっぽい」「おまえみたいなの一番嫌い」「暴力的で何でも奪い取っていい気持ちになった気でいる」と散々に言われてしまった愛は、一見気にしていないのように見えて、実は言われた言葉が頭から離れない。そうして、調子が狂い始める愛の姿は、誰もが一度は感じたことのある自己嫌悪と葛藤するあの感情と同じで、ラストは愛に同情してしまう自分がいた。

本作では、自分のことしか考えない愛と、他人のことを思いやったり、他人のために行動することのできる美雪とたとえ君、という2つのタイプが非常に対照的に描かれている。愛は2人に出会ったことによって初めて”他人のために”という言葉の意味と、それに伴う行動を考えはじめる。愛ほどとは言わないまでも、欲しいものを手にいれようとすると周りが見えなくなってしまったり、無意識に自己中な行動をとってしまったことは多くの人があるだろう。だからこそ、鑑賞後には誰もが、ふと立ち止まって”他人のために”とは何だろうかと考え、少し優しくなれる作品だと思う。

何より、他人に向けた笑顔は、自分に向けた笑顔よりもずっと美しいのだ、という本作のメッセージがとても心に残った。