kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『わたしは最悪。』

〇作品概要

・2022年公開のノルウェー・フランス・スウェーデンデンマーク合作映画

・監督:ヨアキム・トリアー

〇感想・見どころ ※ネタばれ含みます

 感想を一言でいうのは難しい作品だった。一言でこういう映画と伝えることも難しく、ストーリーも設定もこれまでに見たことのない作品であった。

 本作の他作品とは異なる点は、主人公のダメダメで、みっともないところが多々描かれているにも関わらず、彼女のダメな行動も全て肯定し、応援したくなってしまうところだ。主人公のユリヤ(レナーテ・レインスヴェ)は、30歳前後で職を転々としたり、浮気したり、薬をやって妄想の世界に入って家の中で暴れて恋人に迷惑をかけたりする。それらの行動は、傍からみればみっともなくて「最悪」だ。しかし、ユリヤに感情移入しながら観ている私たちには、そんな彼女の最悪な行動も、彼女が正直な気持ちで選択したことだから、なんだか全て正しいように思えてくるのだ。そして、時には、本音に反して、世間的に正しいと思われる事を選択したりもするユリヤの人生を通して、私たちは日々多くの選択をして、自分の人生を歩んでいるのだということに気づかされる。結局、人生何が起こるかわからないし、自分に正直に、自分が最高だと思える選択をすれば、それはきっと「最高」な人生になるはずだということを、ユリヤは教えてくれる。

 また、忘れられないシーンは、ユリヤが現在付き合っている恋人を置いて、別の本当に好きな人の元に行くために、街を爽快に駆けて行くシーンだ。まさにポスターにもなっているシーンである。全編を通してこの場面だけ、ユリヤと彼以外のものは全て静止し、2人の空間以外は全て時が止まるという演出に衝撃を受けた。この演出から、ユリヤは、好きな人のことしか見えておらず、心から愛を感じ、世界には2人しかいないのだと感じていることが伝わってくる。心から恋するキラキラした気持ちを表現したシーンは、これまでにも多くの作品で描かてれてきたかと思うが、その中でも記憶に残る素敵なシーンであった。