kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『恋は光』

〇作品概要

・2022年公開

・監督:小林啓一

〇感想・見どころ 

 文学好きなら、間違いなく楽しめる作品。大学生の話なので、学生向けのキュンキュンする系映画かと思っていたのだが、内容は想像以上に奥深く、比較的大人の方が楽しめる印象であった。

 主人公の西條(神尾楓珠)と、彼が好きになってしまった東雲(平祐奈)が、文学的、論理的、哲学的に「恋」「好き」という感情について説いていくのだが、2人の考えは非常に興味深い。自分が恋だと思ったらそれが「恋」か?、「好き」とは人によって定義が違うのか?など、観ている間に自分も恋とはどういうことだっけ?と、思わず彼らと一緒に真剣に考えてしまう。そして、劇中のでの西條のセリフにもあるように、私たちは「恋」「好き」という言葉をよく使うけど、よく意味をわかってなかったのだと気づかされる。

 そして、思考錯誤して、西條が最終的に見つける「恋の光」の正体は、なんとも美しい。彼が出した答えは、抽象的ではあるが、文学的とはデータや数字に基づいて一つの明確の答えを出すわけではないから、逆にそれが本作には合っている感じがした。

 また、本作を魅力的にしている要素は、何といっても癖が強めの4人のメインキャラクターたちだろう。4人とも、キャラ濃い目のちょっと変わった人物なのだが、なんだか学年に1人はいそう、という親近感が湧いてきてしまうのは、4人の俳優の演技が見事だったからであろう。特に、北代演じる西野七瀬の演技が魅力的で、鮮明に記憶に残る。西條と東雲の=文学好きや、宿木(馬場ふみか)=人の彼氏を奪うことが好きな女子、のように北代のキャラクターを一言で表すことは難しい。そのなんとも言えない唯一無二の存在感が、彼女のセリフやたたずまいから感じられ、かつそれらが違和感なく存在していたことに驚いた。また、北代のどこか抜けた感じの表現が絶妙に素晴らしかった。

 本作は、登場人物たちを通して、改めて「恋」や「好き」ということについて考えさせられる作品だ。そして、観終わった後は、西條のように、自分なりの答えが見つけられるような素敵な恋をしたいと思える素敵な物語である。