kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『アリスの恋』監督:マーティン・スコセッシ

アリスの恋

〇作品概要

・1974年公開のアメリカ映画

アカデミー賞にて、主演女優賞を受賞

・作品内容

 …アリス(エレン・バースティン)は、夫の急死を機に、歌手になるという子供の頃の夢を叶えるために、息子のトミーと共に故郷モンタレーを目指す。その道中、仕事探しに苦戦し、2人の男性との恋もうまくいかない。チャーミングなアリスが、母として、一人の女性として、幸せを追い求める作品。

〇感想・見どころ ※ネタばれ含みます

 この作品は、一人の女性が、女としても、母としても、幸せになるための方法を見出すストーリだ。

 アリスの人生は、男に振り回されっぱなしだ。アリスは結婚を機に歌手になる夢をあきらめ、ずっと夫の顔色を窺いながら生きてきた。夫の急死によってやっと自由を手に入れ、旅の道中で年下の彼氏ができるも、彼は既婚者で、怒ると暴力を振るう男であった。そんな彼の本性を知ったアリスは、彼から逃げれるために夜逃げを余儀なくされる。次の街では、デヴィッドという男性に好意を抱かれ、親しくなる。しかし、デヴィットが息子のトミーと口論になり、暴力を振るったことで、うまくいきそうだった関係に亀裂が走る。このように、アリスはとことん男に振り回されっぱなしの人生なのだ。その男の中には、息子のトミーも含まれていることを忘れてはいけない。アリスが運転に集中している時に、トミーがノンストップで話しかけ、アリスが頭を抱えて困り果てるシーンは、まさに彼女の人生全てを表していると言えるのではないだろうか。 

 そんな風にどれほど男に振りまされようと、アリスが懲りずに男性を必要としたのは、女手一つで息子を育てることが難しいことをわかっていたからだ。そして、デヴィットにおいては、心の底から彼を愛してしまったからだった。うまくいかない人生に心折れ掛けて、張り詰めた糸が切れた時、アリスの力になったのはウェイトレス仲間のフローだった。フローはたくましく、どちらかと言うと男を振り回すタイプの女性だ。つまり、アリスとは正反対なのだ。しかし、フローは同じ女性として、アリスの気持ちに寄り添い、励ましてあげる。そんな2人の友情に感動せずにいられない。性格は違えど、やはり女の気持ちをわかってくれるのは、女だけだという、女性への応援メッセージがこもっているようだった。

 フローの励ましのおかげで、これまで男性に遠慮しがちだったアリスは、大ゲンカ依頼に再会したデヴィットに、はじめて思いのたけを全てぶつける。それでも、デヴィットがアリスを見捨てなかったことで、2人は心から信頼できる恋人同士となる。つまり、アリスは、やっと男性と対等に接することができたことで、本当の愛を手に入れて幸せになることができたのだ。

 この物語は、当時の女性の生きづらさを描き、そのような社会で一人の女性として、一人の母として、幸せになる方法についてのヒントと、何より勇気を与えてくれる物語だ。