kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『ライ麦畑でつかまえて』作者:J・D・サリンジャー(本)

〇感想 

 世界的に愛されている名作故に、哲学的なことや道徳的なことが描かれているイメージを抱いていたのだが、予想と全く異なることに驚いた。その一方で、この小説が、世界中の多くの若者に愛されていることに納得した。なぜなら、本作の主人公のホールデン・コールフィールドは、俗にいう中2病っぽい青年であるからだ。(主人公は16歳だが)

 この小説は、17歳のホールデンが去年のクリスマスを振り返るという構成で、全てホールデンの1人称で語られる。その皮肉を込めた言い回しや、同級生や先生をバカにする感じ、恋愛に興味がありつつもそれを認めない様子などが、なんだか中二病を彷彿とさせる。また、ホールデンはかなり口が悪く、下品な言い回しも多いことからも、一部の社会や大人からは本作が問題作として否定的に捉えられていることにも納得した。そのため、正直不愉快な気持ちになる部分も少なからずあった。それに、個人的にはホールデンとは友達にはなりたいとは思わない(笑)しかし、ホールデンのような問題児が主人公で、作品の中で彼の成長が描かれているわけでもなく、その時その時に彼が独特な角度から世の中や周りの人を見て感じたことがただひたすら書き連ねてある、という小説はこれまでに読んだことがなかったので、そういった意味ではおもしろい読書体験であったことはまちがいない。このような小説は他にないのではないだろうか。だからこそ、ホールデンに共感した若者にとっては、「これは自分だ」と思える主人公にやっと出会えたことは、大きな心の支えとなったのではないだろうか。