kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『月の満ち欠け』作者:佐藤正午(本)

〇感想 ※ネタばれ含みます。

 とても読みやすく、読み進めるほど続きが気になり、あっという間に読み終えてしまった。感動もあり、切なくもあり、怒りも、ホッコリするところもあり…と見どころが満載で素敵なお話だった。

 話の流れ的に、希美も緑坂るりも、正木瑠璃の生まれかわりなのだろう、と予想ができつつも、そのことが徐々に確信に変わっていく過程はドキドキした。また、ラストにおいて、荒谷みずきが小山内の妻の梢の生まれ変わりであるかもしれない!という展開は予想外で驚いたと共に、生まれ変わって愛する人にもう一度会いに来る、というのはなんて素敵なのだろうと心から感動した。

 この小説を読んで最も感じたことは、私たちの日常の中には、見過ごしてしまっている大事な瞬間がたくさんあるということだ。何事も考えず、ただ受け流してやり過ごすこともできるけど、一歩立ち止まって、誰かの発言や、ちょっとした仕草や行動の意味をよく考えてみるだけで、それまでとは違う解釈があることに気づくかもしれない。そして、それにより、これまで見てきた自分の世界は、もしかしたら180度変わる可能性を秘めているかもしれないのだ。

 私は、本作を読む以前は”生まれ変わり”なんて、フィクションの中だけに存在することだと思っていた。だから、あらすじを読んだ時にも、フィクションとして楽しもうと思っていた。しかし、今は”生まれ変わり”もあるのかもしれないと思っている。そういうことも一理あるかもしれない、可能性は0ではないかもしれない…と思ってみることで、自分の見える世界が少しだけ広がり、人生がより素敵なものになるということを、この小説は教えてくれた。