kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『戦場のピアニスト』監督:ロマン・ポランスキー

〇感想・見どころ 

 主人公であるシュピルマンたちの、ゲットーでの悲惨な生活状況がとてもリアルに描かれていて、戦争の悲惨さを痛切に感じた。そこでは、人が驚くほど簡単に次々と殺され、多くの場面で道端に死体がいくつも普通に転がっている…過去に実際にあったとは思えないそれらの光景は、直視するのも辛く、観ていてとても胸が苦しくなった。また、自分も明日には殺されるかもしれないという緊迫感が、常に画面越しからも伝わってきて、全体を通して演出が素晴らしかった。

 本作は、実在の人物の実体験が元になっていることからも、戦争の悲惨さと歴史の過ちを知るうえで、誰もが見るべき作品であること間違いない。当時、カンヌ国際映画祭にてパルムドール賞を受賞したことをはじめ、数々の賞を受賞したことにとても納得した。とても心に深く響く作品であった。

 

〇心に残ったシーン 

※以下若干のネタばれ含みます

  主人公のシュピルマンは、長年過ごしたゲットーをなんとか抜け出し、数か所の隠れ家を経るも、敵との交戦に巻き込まれる。それも何とか逃れ、やっと瓦礫のかたまりとなった廃墟の屋根裏に腰を落ち着かせるが、ある日遂に一人のドイツ人に見つかってしまう。しかし、彼はシュピルマンを殺そうとしない。それどころか、彼はシュピルマンがピアニストだと知ると、廃墟にあったピアノで弾いてみるように言うのだ。その時のピアノを弾くシュピルマンの姿は、まさに『戦場のピアニスト』だ。見渡すと全てが灰色の世界で、周りにはシュピルマンとドイツ人以外誰もいない中で、シュピルマンの弾く美しいピアノの音色が響き渡る。そのある意味で異様な光景から目が離せず、切なさと同時にその瞬間だけは全ての戦争が止まったような感じがして、確実に記憶と心に残るワンシーンであった。