kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『百花』監督:川村元気

〇作品概要

・2022年公開

ワンシーンワンカットで撮影

〇感想・見どころ ※ネタばれ含みます

本作では、認知症と診断された百合子と、母である百合子に向き合う息子の泉の様子が描かれているのだが、泉の妻に言わせると2人はちょっと変わった親子だ。なぜなら、過去に百合子が泉を置いて1年間男のところに行き帰ってこなかったことがあり、泉はそれを忘れられず、百合子と微妙な距離間を解消できずにいるからだ。そんな2人の現在の姿が、時折過去の回想を交えながら描かれる。

そのような物語の中で終始まとわりつくのは”記憶”だ。泉が、職場でヴァーチャルヒューマンアーティストを創るという業務をしている際、記憶を詰め込みすぎたからうまくいかなかったのか?記憶を忘れる機能があった方がよいのか?という意見が交わされたる場面があったり、「記憶が盗まれるって怖い」とセリフがあったり、百合子が認知症であることからも”記憶”とは一旦何なのだろうかということを無意識的に考えさせられる。そして、記憶の中でも、特に家族との記憶は、親にとって、子にとってそれぞれどいういう風に残り、何が色合わせていくのだろうかと自分に重ね合わせて考えてしまう。百合子と泉の大切な思い出でである”半分の花火”を、認知症の百合子が覚えていたのに、泉は覚えていなかった。そんな切ないことが判明した時に、泉は、あの時百合子は自分を捨てたわけではなく、自分を愛していなかったわけでもなかったのだと思えたのかもしれない。そして、百合子の過ちを許すことができたのかもしれない…。多くの記憶を共有している相手の記憶が失われていくことを目の当たりにする苦しみと、そんな中でも残り続ける記憶の美しさに、感極まるような作品だった。

また、全体的な雰囲気としては、度々ピアノの音色が響き渡る感じや、時代・記憶が錯綜する構成において洋画のような雰囲気を纏っている作品だと感じた。

 

個人的な感想としては、なんだか泉に完全に感情移入してみることができず、終始客観的にみてしまう自分がいた。その理由は、私が女だからだろうかと思い、この作品を観て改めて母と娘の関係と、母と息子の関係というのはまたちょっと違うのだろうなと改めて思った。