kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『ロスト・ドーター』

〇作品概要

・2021年のアメリカ映画

・監督:マギー・ギレンホール

ベネチア国際映画際にて、最優秀脚本賞受賞

アカデミー賞にて、主演女優賞・助演女優賞・脚色賞にノミネート

 他 多数受賞

・あらすじ…

 中年女性のレイダは休暇にひとりで海にやってきた。そこで、ビーチにいた母親と幼い娘の姿を見て、過去の自分の子育ての記憶を思い出す。それ以来、彼女は過去のある子育てに関する自分の過ちを頻繁に思い出すようになり…

〇感想・見どころ ※多少のネタばれ含みます

 主人公のレイダには、過去に3年間幼い娘たちを置いて家を出てしまった経験がある。現在は、娘たちとも普通に電話で話す良好の関係を築いてるように思えるが、その過去が彼女の心には大きな傷跡として残ったままでいる。彼女はなぜ、ビーチにいた女の子が大切にしていた人形を盗んだのだろうか。レイダは、後に「出来心」と打ち明けるが、盗んだ人形に着せる洋服を買ってあげて、添い寝しながら寝るほど大切にする様子からは、ただの出来心だったとは思えない。「私に母性はない」と話すレイダは、人形をかわいがることを通じて、自分に母性があるかどうか確かめたかったからではないか。だが、過去の回想として映される子育てしている時のレイダの表情からは、母性が全くなかったようには思えないのだ。時々こどもを鬱陶しく思ってしまったり、八つ当たりをしてしまうことは誰にだってあるのではないだろうか。少なくともレイダは、常にこどもに嫌悪感を抱いていたわけではなく、子どもと一緒に遊んでいる時に見せる笑顔からは、子どもを心から愛しているように思えた。そして、子どもを手放し、自分の幸せを優先するという選択を一度はしたものの、結局彼女は家に帰ってきた。それは、まちがいなくレイダには母性があったからだと言ってよいのではないだろうか。また、現在娘たちと良好な関係を築けているのも、恐らく彼女が家に戻ってきた後、空白の時間を埋めようと努力をしたからだろう。それでも、レイダは今でも鉛のように残っている罪悪感を抱えながら生き、自分を攻めており、その姿に観ていてとても胸が苦しくなった。

 母性とは何か?母親として生きると同時に、自分の幸せも手に入れながる生きることはできないのか?仕事と育児の両立‥‥美しい海辺の風景と共に、多くの母親が抱える心の葛藤が、強く記憶に残るストーリーで描かれていた。