kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『PK』

〇作品概要

・2014年のインド映画

・監督:ラージクマール・ヒラーニ

・「きっと、うまくいく」の監督と、主演のアーミル・カーンが再びタッグを組んだ

・あらすじ(簡単に)

 …アーミル・カーン演じる宇宙人が、調査のために地球にやってきた。しかし、着いて早々に、元の星に戻るための宇宙船を読び戻すリモコンを盗まれてしまう。彼がピンチの時に助けてくれたジャグ―(アヌシュカ・シャルマ)と共に、リモコンを取り戻すために地球人に溶け込んで生活を送るが、人間の様々な宗教的慣習に疑問を持ち始め...

〇感想・見どころ ※多少のネタばれ含みます

 リズム感よく進むストーリーと、先の読めない展開にとても引き込まれる。特に、アーミル・カーンが演じる宇宙人は必見だ。瞬きをせず、常に大きく目を見開いてる姿は、もう宇宙人にしか見えない。

 本作では、宇宙人が地球に来て初めて”宗教”に出会い、それぞれの宗派の教えの矛盾している点や、納得できないことについて疑問を投げかけていくのだが、その着眼点がとても的を得ていて興味深い。例えば、散々寺院を探し回っても神様に会えなかった宇宙人は、「神様が行方不明」というチラシを街中に配る。また、神を崇めるために牛乳を供える人を目にして、本当の神様であればその牛乳は貧しい人に分け与えるように言うのではないか?と質問を投げかける。彼の抱く疑問は、どれも言われてみれば確かにそうだと納得させられることばかりだ。本作の脚本を書いた人は、当たり前だが私たちと同じ地球人のはずなのに、なぜこんなにも生まれた時から当たり前にあることを、客観的に見ることができるのだろうかと思わず感心してしまう。

 本作の中で最も衝撃を受けた点は、中盤で突如起こるテロによる電車の爆発事件により、物語の雰囲気が一気に変わることだ。それまでは、ユーモア満載で、明るくて楽しい雰囲気なのだが、何の前ぶれもなく突然大きな爆発が起こることで、画面の中で呆然とする宇宙人と同じように、こちらも唖然としてしまう。そして、宇宙人はこの事件を機に、これまで宗教に対して疑問を投げかけていたが、我々が辛い時に希望を与えてくれるのは神様だと、始めて宗教の存在を肯定するのだ。テロ事件が起こることで、私たちの人生においても、自分たちでコントロールすることのできない理不尽なことや不幸なことがあった際に、宗教に馴染みのない日本人でさえも思わず神頼みをしたり、神様に頼ったりすることがあることを思い出す。だからこそ、宇宙人の見出した神様の存在意義にとても納得してしまうのだ。これほど、巧みに構成された物語はないのではないだろうか。

 本作は、日々を過ごす中で時に当たり前のことに疑問を投げかけることの大切さを教えてくれる。そして、人はなぜ神様を求めるのか、宗教とは何なのかという問いの答えをユーモアと共に導き出してくれる作品だ。