kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『シン・ゴジラ』

〇作品概要 

・2016年公開

・監督:庵野 秀明

〇感想・見どころ 

①本作の”ヒーロー”=政治家

 今回が初のゴジラ作品鑑賞だったため、鑑賞前はゴジラをかっこ良く倒すことがメインで、子どもも楽しめるエンターテインメント要素が高い作品というイメージを勝手に抱いていたのだが、実際は想像と異なった。本作のストーリーの中心となっているのはゴジラを前にして、政治家たちがどう対処するかだ。そのため、登場人物のほとんどが政治関係者で、難しい政治用語も頻繁に出てくるため内容についていくだけでもかなり難しい。しかし、本作の作り手は政治の細かいことを観客に理解してもらいたいわけではないのではないだろうか。なぜなら、該当する憲法の条項が小さな文字で画面いっぱいに記載されるも、確実に全て読むことは不可能な速さですぐに次のカットに移ったり、登場人物の多くが専門用語を早口でまくし立てる場面が頻繁に出てきたりするからだ。それらによって、大抵の人が理解できないような難しいことを理解し、扱っているのが政治家であり、彼らは一般人の手の届かないところにいる人たちなのだという印象を抱いた。つまり、作り手の意図とは、本作では政治家たちが悪者をやっつける”ヒーロー”であり、この国の運命を担う”特別な人たち”なのだということを強く印象付けることにあったのではないだろうか。

  

②「作品概要治 対 ゴジラ※ネタばれ含みます

  本作では、日本の運命がかかっている非常事態において、どのように日本の政治家たちが対応するのかということが非常にリアルに描かれている。その中には、日本の政治を風刺する場面が度々出てくる。例えば、ゴジラを退治するに危険な爆弾を使うためには様々な立場の人の承認が必要で、やっと内閣総理大臣の承認まで辿り着くも、その時にはもう指示を出した時とは状況が変わっており、結局依頼は却下せざるを得なくなる。これは、とにかく一つの事が実行できるようになるまでの工程が長すぎるという日本文化の特徴を表しているだろう。また、政治家たちが、他国の反応とアメリカの顔色を窺いながら判断をくだす様子も日本人らしい。それらは、見ていて少しのいらだちを感じる一方で、多くの日本人はそういうものだからしょうがないと共感してしまうのではないだろうか。そうして、日本の政治を風刺する様は秀逸であると同時に、日本の政治に対して諦めの感情を抱いてしまいそうになる。しかし、本作の見どころであり、賛辞したくなる点は、そういった感情を覆す終盤の展開だ。終盤において、日本の政治家たちは、他国の圧力にも屈せず、底力を見せて怪物を対処する方法を自分たちで見出す。そして、ゴジラとの闘いに勝利を収め、自力で自国を守るのだ。このような結末に、日本人として誇らしくなると同時に、この国には窮地に陥った時に自分たちで立ち上がることのできる力があるのだということを思い出させてくれ、日本の未来への希望を抱かせてくれる。