kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『帰らない日曜日』監督:エヴァ・ユッソン

〇感想・見どころ ※ネタばれ含みます

①作品構成と雰囲気について

 頻繁に時間軸が交錯し、かつ、同一の時間の中で何度も場面も変わる構成が、なんだか神秘的で、非日常な世界に浸っている感覚を強く起こさせた。これほど場面が変わる作品は、あまりないのではないかと思う。

 全体を通して1920年代の自然豊かな美しい情景を感じられる一方で、当時の人々の戦争によって失ったものに対する喪失感が常にどこかにあり、ほのかに寂寥感が漂っている点が、作品に赴きを与えていた。

 

②印象に残ったシーン

 最も印象に残ったのは、ジェーンがポールの屋敷を生まれたままの姿で歩きまわるシーンだ。貴族のきちんとした生活を連想させる当時の大きな屋敷の中で、屋敷の住人ではないジェーンが、一切の服も身に着けず、食べたり本棚を物色したりする姿は異様な光景で、釘付けになった。しかし、その姿は強く美しく、その瞬間のジェーンは全てのしがらみから解かれて、自由であることが強く感じられ、心に残るシーンの1つになった。

③ジェーンが強く生きられた理由

 ジェーンは、クラリー夫人から、孤児であるということは、生まれた時から全て奪われていたということであり、失うものが何もないことは”強さ”になるのだと言われる。確かに、ジェーンは他の登場人物と比べると、強い人であるかもしれない。しかし、その一方で、心から愛したポールと、婚約者のドナルドを失ったジェーンの悲しみは、家族がいる人に比べてより一層大きかったのではないだろうか。つまり、孤児であることは強みになるかもしれないが、その分、彼女に降りかかってくる悲しみも大きいということだ。それでも、ジェーンは心折れず、作家として書くことを全うすることができた。それは、何より、彼女に書くきっかけの3番目を与えたポールの言葉の存在が大きいのではないだろうか。想像を超えるような、悲しい出来事を乗り越えて生きていく強さは、失うものがあるかどうかではなく、”愛”が与えてくれるものなのだと私は感じた。