kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『旅情』

〇作品概要

・1955年製作のイギリス映画

・監督:デヴィッド・リーン

〇感想・見どころ ※ネタばれ含みます

 ヴェネチアが舞台のため、”水上の街ヴェネチア”の美しい街並みを堪能でき、風景を見てるたけでも満足できる作品だった。(ただ、古い映画のため映像が若干荒いのが残念…)

 主人公のジェイン・ハドスン(キャサリン・ヘップバーン)は一人旅でヴェネチアを訪れる。そこで、現地の素敵な男性と運命的な出会いを果たす。女性なら一度は憧れるような王道ラブストーリーで素敵!と思っていたが、実はその男性は妻子持ちだったという落ちが待ってる。彼の言い分としては、妻子がいようとも、好きなもの同士が愛し合って何が悪いのだ?ということらしい。それは、イメージしがちなプレイボーイのイタリア人っぽいと言えばその通りで、旅行中のひと時の恋と考えれば、それはそれでありか…と主人公と共に開き直ってしまった(笑)また、そういった展開はある意味リアルで、おとぎ話っぽくならない効果を生んでいてよかった。

 主人公が、サンマルコ広場のカフェでのんびりお茶をしたり、美しい運河の道を散歩したり、中世ヨーロッパのような美しさが残るホテルに滞在して過ごている様子が、映像美だし、ただただ羨ましくて、鑑賞後はヴェネチアに行きたくなってしまうこと間違いない。

 

 

『サバカン SABAKAN』

〇作品概要

・2022年公開

・監督:金沢知樹

〇感想・見どころ 

 なんかもう全てがキラキラしていた。長崎の美しい海、温かい家族、夏の冒険、友情…自分もこんな素敵な小学生の夏休みを過ごしたかったなーと思い、ただただ彼らが羨ましい!時代設定が1986年の夏のため、服装やテレビ番組から昭和の雰囲気が漂っているのもよかった。私は世代じゃないけれど、なんだか懐かしいなあと思ってしまうような温かさがあった。

 主人公の子供たちは、イルカを見るために2人だけでブーメラン島に行くのだが、その道のりはかなり険しい。とても急な山道を登ったり、ヤンキーに絡まれたり、海を泳いで渡ったりする。2人で支え合いながら乗り越えていく様子からは、きっとこの子達は今日の出来事を一生忘れないだろうなーと思わずにはいられない。そんな風に、都会では絶対にできないことを経験している彼らの夏休みがまぶしかった。

 そしてラストは想像以上の切なさが待ち受けていた。子役の2人のキャラクター作りが本当にすごくて、終始物語に入りやすかったのだが、だからこそ最後に号泣する彼らを見て、こちらも泣かずにはいられなかった。小学生時代に築く熱い友情って、本当に素敵だ。これはもう、毎年夏になったら思い出す作品になると思う。

『海街dairy』

〇作品概要

・2015年の邦画

・監督:是枝裕和

カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品

日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞

〇感想・見どころ 

 本作は、何か大事件が起こるような物語ではなく、鎌倉に住む姉妹の和やかな日々が落ち着いたトーンで描かれている作品だ。だけど、つまらなくない。鎌倉の風情溢れる街並みや、静かな波の音が聞こえる海辺の町の落ち着いた感じが、物語に温かみを加えていて、観ていてとても穏やかな気持ちになれる作品だった。

 だけど、よくよく考えると描かれているテーマはそんなに軽いものではない。広瀬すず演じる「すず」という少女が、両親を失ったことで、鎌倉に住む腹違いの姉たちと一緒に住むことになるというストーリーだからだ。穏やかに見える日々の中でも、すずは、自分がいることで誰かを傷つけていないか、自分は本当にここにいてよいのかと、日々葛藤する。そんなずすに、3人の姉たちや町の人々は優しく寄り添い、ここにいていいのだと、すずの居場所が自然と作られていく様子に終始ほっこりした。また、そんな風にだんだんと打ち解ける様子が、姉妹で浴衣を着て庭で花火をしたり、庭にある梅の木の実の収穫をして梅酒を作り、熟した頃にみんなで飲んだり…というような季節を感じる場面と共に描かれていることが余計に心を揺さぶり、家族や姉妹って素敵だなーと何度もジーンときてしまった。

 あと、個人的に印象に残ったのは、長澤まさみの演技だ。本作では、長女とは対照的に陽気でちょっとだらしない次女を演じているのだが、冒頭のたった数カットだけで、そのキャラクターがわかるし、本当に終始自然すぎて、こんなに演技うまかったっけ⁉と驚いてしまった。

 

 

 

『レベッカ』

〇作品概要

・2020年のイギリス映画

・監督:ベン・ウィートリー

・1940年に、ヒッチコックが同じ原作で同名の映画を制作している。

・あらすじ

…主人公(リリー・ジェームズ)は、ある夫人の付き人として、モンテカルロでの旅行に同行していた。そこで、富豪のマキシム・ド・ウィンター( アーミー・ハマー)と恋に落ち、2人は婚約する。彼の豪邸に移り住むことになった主人公は、そこに住む使用人たちが、未だに夫の亡き妻の存在に囚われていることに気づく。そして、彼女自身もだんだんと、夫の元妻の存在に翻弄されるようになり…

〇感想・見どころ ※内容含みます

 前半は圧倒的映像美のロマンスで、後半は不穏な空気漂うサスペンスという、前後で物語の雰囲気がガラッと変わる作品だった。

 前半のモンテカルロの場面は、息をのむほどの映像美で溢れている。主人公が滞在するホテルも中世の宮殿のようで、全体的にパステルカラーの色調もなんともかわいらしかった。主人公が、マキシムとのデートに行く時には、毎回雇ってもらっている夫人に「テニス教室だ」と嘘をついて、いつもラケットを持ってウキウキしながら出かける様子が微笑ましく、きゅんとしてしまった。また、マキシムとデートに行く場所を決めるために、いつもホテルのフロントマンを通して手紙でやり取りをするのだが、その古風な感じがなんともロマンチックで素敵だった。

 そんな風に、前半はときめき満載の恋愛物語なのだが、彼女がマキシムの家に移ってから雲行きが徐々に怪しくなりはじめる。とは言え、マキシムの屋敷もかなりの豪邸で、内装の豪華さはモンテカルロのホテルに引けを取らず、特にガラスの間のような部屋の美しさには圧倒された。引き続き、中世ヨーロッパ的な雰囲気は楽しめるのだが、終盤は亡き妻に関するある事実が明らかになったことで裁判が始まってしまい、もう完全に泥沼のサスペンス映画になる。個人的には、最後の裁判のくだりはなくてもよかったかなと感じた。レベッカという女性が謎に包まれていたままの方が、彼女の存在に対する恐怖感がいつまでも記憶に残った気がする…ただ、ときめくような恋物語がありつつ、レベッカという謎の存在が差し迫り、最後は謎の正体の全貌が明らかになる、という全体のストーリーの流れは、比較的引き込まれ、総じておもしろかった。

 

『TANG/タング』

〇作品概要

・2022年公開の邦画

・監督:三木考孝浩

・原作「ロボット・イン・ザ・ガーデン」

・あらすじ

ニートでゲーム好きの健(二宮和也)は、弁護士の妻・絵美(満島ひかり)に養ってもらって生活している。そんなある日、庭に旧式のロボットが迷いこんでくる。ついに妻に呆れられて、家を追い出されてしまった健は、「TANG」と名乗るボロボロのロボットと共に旅に出ることになる。健は、TANGを開発した会社に、TANGを届けようとするが、思わぬ展開となり…

 

〇感想・見どころ ※ネタバレ含みます

 冒頭から、キラキラしたファンタジーの世界観に惹かれた。舞台は日本であるが、現在より何年も先の話の設定のため、画面に映る街の様子は現実世界とは全く異なり、例えるなら、実写版ディズニー映画のような雰囲気があった。あのファンタジー感が日本映画でも見られるのか!という事に何より驚いた。そして、何と言っても総じてTANGが想像以上にかわいかった(笑)CGと思えない存在感で、チョコチョコ歩く姿も驚くほどリアルだ。そのため、少しずつ健になついていく様子が、人間の子供のように思えてきて、完全に母性本能をくすぐられた。

 ストーリーとしては、ざっくり言ってしまうと、TANGを開発した人を探す旅に出るも、その道中に悪者にTANGを狙われ、なんとかして開発者の元に辿り着くも、実は本当の悪の根源は開発者だった、という比較的ありふれた展開だ。そのため、油断しそうになるのだが、ラストは想像以上の感動が待ち受けている。そして、その感動はなんと言っても二宮和也と、満島ひかりの演技力によるものだ。旅を終えて、心を改めて帰ってきた健は、妻・絵美(満島ひかり)に思いを伝え、和解する。その時の、目に涙を浮かべながら話す2人の演技は圧巻だった。あれは完全にもらい泣きしてしまう。ラストシーン以前にも、健が1人で号泣するシーンがあるのだが、それにも思わず泣いてしまった。二宮和也の涙は、本当に自然で、どの作品を見ても彼の涙にはいつももらい泣きしてしまう。本作でも、そんな彼の演技力が存分に発揮され、明らかに作品のクオリティを高めていると感じた。

 確かに、ストーリーは、これまで見たことのないものを求めている人には物足りないかもしれないが、日本のファンタジー映画とCG技術のクオリティ、そして、役者陣たちの素晴らしい演技という点において、観る価値はあると感じた。

 

『ジュマンジ』

〇作品概要

・1995年のアメリカ映画

・監督:ジョー・ジョンストン

・関連作品『ザスーラ』(2005)

・続編『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017)『ジュマンジ/ネクスト・レベル』(2019)

 

〇感想・見どころ ※内容含みます

 もし、止まったマスの内容によって、様々な危険な生き物たちをどこからともなく召喚してくる、すごろく型のボードゲームが存在したら??という、なんとも欧米らしい発想から生まれた本作は、純粋に子供心に帰れる楽しいファンタジー映画かと思いきや、大人も本気でゾワっとしてしまうよう怖さと楽しさが入り混じった作品だ。

 そのすごろく型ボードゲームは、サイコロを振ってしまったならば最後。自分の駒は、ゴールに辿り着くまでマスから勝手に動かすことができず、ボードゲームに固定されてしまう。そして、各マスに記載されている内容は、次々と止まった者の身を危険にさらすことばかりだ。ある時は、ライオンや大きな毒グモを召喚したり、洪水になるほどの雷雨を呼び起こしたり、自分の命を狙ってくる謎な男を召喚したりする。そうしてボードゲームによって召喚された生き物たちは、誰かひとりがゴールして「ジュマンジ!」と唱えるまで消えないという設定のため、ゲームに参加した者はゲームが終わるまで降りかかる様々な脅威と戦わなければならない。冷静に考えると突飛な発想すぎるが(笑)、登場人物たちの家に次々と動物が表れ、どんどん家の中がカオスになっていくのを見ていると、もし自分もジュンマンジに参加することになったら??とつい想像してしまい、本気で怖くなってくる(笑)また、登場人物たちが、毎回召喚される動物たちと、知恵を絞って戦う様子は、ハラハラドキドキしてしまう。間一髪で勝利を収める時も多々あり、終始ジェットコースターにのっているようなワクワク感と恐怖感を楽しめた。

 また、冒頭のシーンも印象的だった。冒頭はなんと100年以上前のシーンから始まるのだ。100年以上前にもそのボードゲームは存在しており、危険を知った人たちが山奥に埋めるというシーンから本作はスタートする。その時点では、観ている者は、彼らが埋めた物が何かはわからないので、一体なぜ山奥に埋めたのか?どんな危険が潜んでいるのか?と、これから始まる物語が気になって仕方がなくなってくる。例えるなら、夢の国のアトラクションの列に並んでいる時のようなドキドキ感だった。

『溺れるナイフ』

〇作品概要

・2016年公開

・監督:山戸結希

・原作コミック「溺れるナイフ」作:ジョージ朝倉

・あらすじ

…15歳の望月夏芽(小松菜奈)は、東京でモデルをしていたが、家の事情で浮雲町に引っ越すことになる。そこで、ある日同級生のコウ(菅田将暉)に出会う。それ以来、夏芽はコウのことが頭から離れなくなってしまう。コウもそんな夏芽に惹かれ、2人は付き合うことになるが、ある事件をきっかけに傷を負った2人は、次第に距離が離れていき…

〇感想・見どころ  ※ネタバレ含みます。

 本作は、キラキラした純白な青春恋愛映画ではない。なぜなら、夏芽とコウには生涯消えることがない傷を負うことになる事件が起こるからだ。夏芽は、夏祭りの日にレイプの未遂事件に合ってしまう。コウは、その場で居合わせながらも夏芽を守ることができなかったことに責任を感じ、2人の距離は次第に離れていってしまう。そして、その事件の犯人は、数年後に再び夏芽の目の前に現れるのだ。そういった不吉な予感は、舞台となる街の深くて濃い海の碧さや、波の荒さからも連想させられ、作品全体を通してどこか不安な気持ちにさせる雰囲気があった。一方で、そんな海の中から、突如現れるキレイな金髪のコウの存在感は圧倒的で、夏芽が惹かれるのにも納得した。この頃から既に、菅田将暉の演技が同年代の俳優たちと比肩しても、明らかに秀でている事に驚いた。

 また、全体を通して独特なカットが好みで印象に残るシーンが多かった。夏芽とコウが2人で海ににもぐるシーンや、炎が不気味に赤々と燃える夏祭りのシーン、ラストの赤いバラをチラシながらバイクで走り抜けるシーン…など、若さ故のもろい情熱を感じられるような、儚くも力強いシーンが脳裏に焼き付いた。