kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『テス』監督:ロマン・ポランスキー

〇作品概要/あらすじ

・1979年公開のフランス・イギリス映画

・原作:トーマス・ハーディ「ダーバヴィルのテス」

 テス(ナスターシャ・キンスキー)は、家族と貧しい暮らしをしている美しい少女である。ある日父親が、一家が名家の先祖である可能性があるという情報をかぎつけ、テスはダーバヴィル家を訪れることになる。テスは、そこで出会った一家の息子のアレックに犯されてしまい、妊娠してしまう。その後もテスには不幸なことが次々と訪れ…そんなテスの悲しい物語。

<あらすじの続きと結末>※以下よりネタばれ含みます

 テスは、アレックと一緒になれば貧しい生活や労働から抜け出し、きらびやかな人生を送ることができるにも関わらず、アレックを愛していないが故に彼と一緒になることを選択しない。また、アレックとの間に身ごもった赤ん坊が生まれ、彼女は彼に頼らずに一人で育てようとするも、ほどなくして子供は亡くなってしまう。その後、何年も肉体労働を続けて日々を凌ぐ。しばらくして、ついにエンジェルという心より愛せる男性と出会い、二人は婚約する。しかし、勇気を出して過去のアレックとの過ちを打ち明けると、エンジェルは受け止めきれずにテスを残してブラジルに旅立ってしまう。彼女は、やっと手に入りそうだった幸せをまたも手放すことになり、以前のように毎日過酷で孤独で辛い労働生活を強いられる。

 数年後、父親の死をきっかけに家族が露頭に迷いそうになると、どれほど辛い毎日を送ってもこれまでアレックに頼ることは決してなかったテスだったが、家族を救うために、泣く泣くアレックの力を借りることを決意する。その結果、テスは愛していないアレックと共に生活を送ることになる。さらに時を経て、やっとテスの過ちを許す決心のついたエンジェルが、テスを迎えにくる。テスは一度はエンジェルを拒絶するも、彼への愛を抑えることができずに、彼の元にいくため、アレックを殺してしまう。多くの時を経て、やっと愛する人と共に過ごす時間を手に入れたテスだったが、その時間は短時間で終わってしまう。テスは追ってきた警察に殺人の罪で逮捕され、絞首刑となる。

 

〇感想・見どころ 

①美しすぎるテス(ナスターシャ・キンスキー

 とにかく、テス演じるナスターシャ・キンスキーが美しい。何人で映っていようと、自然と彼女に目が行ってしまい、かつテスの凛とした雰囲気も溢れており、これ以上ないぴったりな配役という印象。ナスターシャだからこそ、本作が成り立つといっても過言ではない。

 

②19世紀末のイングランドについて

 本作は、19世紀末のイングランドが舞台となっているため当時の生活の様子を知ることができる。特に、身分が高い女性たちのドレスや彼らの住まいの厳かな家具などはても美しく、魅力的だ。一方で、農民など身分の低い人たちは女性でも力仕事や、泥だらけになるような仕事をしており、その生活の差を痛感することができる。

 

③テスの強さに感動する ※ネタばれ含みます

  彼女は裕福な暮らしのために、愛していない人と生きることを選択しない。また、どれほど悲惨な状況に陥っても、自分をかつて傷つけた人に施しをもらうことも決してしない。テスは、誰もが認める美少女であったため、他の町の身分の高い男性と婚約することを選ぶことも可能であっただろう。しかし、テスはエンジェルを心から愛していたため、自分がどれほどつらくても耐え抜くのだ。その心の強さと美しさは、見ていて苦しくなるほどである。それほど常に正しく誠実に生きてきたテスが、始めてアレックスを殺すという過ちを犯してまで、自分の幸せを手にしようとする。それほど、テスはこれまでずっとエンジェルのことを待ち続けていたのかと思うと、いたたまれない気持ちになる。それにも関わらず、神様はそんなたった1回のわがままにも決して許しを与えてくれないのである。それでも、警察が迎えに来た時には、一切抵抗せずに罪を償うことを受け入れるテスの姿は、切なくも美しい。

 テスは、誰よりも美しく強い心を持っていたからこそ、それが容姿に反映されていたのではないだろうか。テスの救われない人生をこれほど心痛に描いた本作は、名作であると感じた。