kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『ザ・メニュー』 監督:マーク・マイロッド

〇作品概要

・2022年公開のアメリカ映画

・ホラー、コメディ

〇感想・見どころ 

 情報解禁された時は、レストランが舞台のヒューマンドラマ的なストーリーかと思っていたが、予告を見て、「なんか違う!」と思ってから気になって仕方がなかった。そのわずかに感じた違和感や恐怖心が、映画を観るまで全くわからないという宣伝もよかった。

 一言でいうと予想できない展開により期待以上のおもしろさだった!予告で客たちが森の中を逃げ回るシーンがあったから、サバイバルゲームが始まるとかグロめのストーリーを予想していたのだが(笑)、実際は全然違った。

 ストーリーも面白くさせていた要因は何より濃い登場人物たちだ。とにかく謎に包まれて狂気を彷彿とさせるシェフ(レイフ・ファインズ)、物語を動かす招かれざる客マーゴ(アニャ・テイラー=ジョイ)、マーゴを誘った男(ニコラス・ホルト)。この3人のキャラが強烈でさすがの配役という印象。個人的に、ニコラス演じた最低な男が本当に最っ低すぎてツボだったw また、後半における、シェフとマーゴのバトルは必見。登場人物の中で最もまともな人物ともいえるマーゴが、冷静に分析した末に見出した策にはなるほど!!っと感心すると同時に、その時のシェフの反応からシェフの本心が垣間見えた場面には心を揺り動かされた。

 そして、本作はただのホラーコメディ映画ではなく、いろいろな風刺やメッセージが込められている点もまた魅力。特に頭でっかちな富裕層に対する風刺、労働環境の問題、芸術家の苦悩、志のない芸術家への怒りなど、振り返るといろいろなところにメッセージが散りばめられていたと気づく。そしてそういったメッセージ含め、本作では説明セリフがないところが個人的には非常によかった。例えば、それぞれの客たちがレストランに来た背景や具体的な情報については、冒頭で軽く触れるのみで、あとは観客の想像に任されている点がすばらしかった。

 

※以下ネタバレ含みます

 

 ラストシーンは、かなり考察しがいがありそう。結局彼らはなんで死ぬことを受け入れたのだろか...マーゴだけがシェフを喜ばせることができたから、脱出することを許されたのか…?個人的な意見としては、頭でっかちな客たちはどうしようもない状況に陥った場合、自分で対処できず、運命を受け入れるしかない人たちだという風刺が込められているように感じた。マーゴは自分の力で考え、必死に生きようとしたのに対して、裕福な客たちは結局口が大きいだけで大して何もできない人たちだということが対局的に描かれていたのではないか。また、途中のトルティーヤに描かれていたように、命と引き換えにしてまで暴かれたくない罪があったというのも、体裁を気にする裕福な者たちが死を選ぶ理由の一つだっただろう。そして、シェフがマーゴのおかげで希望を見出したかと思いきや、結局死を選択したことは、権力者たちは一人の芸術家を取返しのつかないほど狂気にさせたという、これまたメッセージが込められているように感じた。