kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『先生、私の隣に座っていただけませんか?』

〇作品概要

・2021年公開

・監督:堀江貴大

〇感想・見どころ 

 黒木華柄本佑の演技力によって作り出される、佐和子(黒木華)と俊夫(柄本佑)のなんとも言えない気まずい雰囲気や、お互いの心情を探りあっている感じに終始惹かれた。特に、俊夫の、佐和子が新作のテーマは「不倫」だと伝えた時の動揺っぷりや、教習所の先生である新谷(金子大地)を家に連れてきた時の嫉妬している表現が絶妙で、思わず失笑してしまった。改めて、柄本佑の演技は唯一無二だなと感じ、終始彼の存在感に見入った。また、編集者の千佳(奈緒)の狂気っぷりも見どころだ。千佳も不倫に加担しているにも関わらず、一貫して全く悪びれる様子がなく、むしろ状況を楽しんでいる様子はもはや清々しくさえ思え、彼女の存在が、物語の雰囲気が暗くなりすぎないようにさせていると感じた。

 中盤までは、佐和子が、現実に起きた出来事をベースに漫画を描いていくため、漫画が現実を追いかけていたのが、途中で遂に漫画が現実に追いついてしまい、「以後の漫画の続きは現実で」と、漫画の世界と現実の世界が合流するという展開は、どうなっているの⁉と思うと同時に、千佳と同様にどんな修羅場が待ち受けているのかとワクワクしてしまった。そして、終盤において、遂に漫画が現実を追い越すという展開に差し掛かると、もうどこまでが漫画の世界で、どこからが現実なのかがわからなくなってくる。漫画で描かれたフィクションが、現実になっていくという、これまで他作品でも観たことがないような光景が広がっていくため、その結末から目が離せなかった。また、本作では、タイトルの意味の解釈が何度か変わる。終わりにかけて、やっとこういう意味だったのかとタイトルの意味が種明かしをされたかと思いきや、さらに最後の最後にまたその解釈をひっくり返されたところが最高に面白かった。

 本作は、物語の構成が緻密で、これまでにない構成故にとても楽しめるのだと思う。観る人によって、どこまでが本当に起こったことか捉え方が変わると思われるため、本作を観た後はきっと誰かと感想を言い合いたくなってしまうだろう。