kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『マイスモールランド』監督:川和田恵真

〇感想・見どころ ※ネタばれ含みます

  全体的に音楽が少ないのでドキュメンタリーを観ているような感覚に近かった。川和田監督は、是枝監督の助手を務めていた経験があるようなので、確かに雰囲気は是枝作品に近いと感じた。

  本作は、難民問題が思っているよりも私たちの身近にあることを教えてくれる。何よりも心が痛かったことは、何の罪もない子供たちが犠牲になるということだ。サーリャはまだ17歳であるにも関わらず、父親が入管の施設に収容されたことで、弟や妹の面倒を見なくてはいけなくなる。また、在留資格を失ったことで、自分も好きな人と会えない、受験ができないという困難に陥る。それにも関わらず、サーリャは誰にも頼ることができず、兄弟の前では気丈にふるまう。そんなサーリャの姿に心を痛めずにはいられない。

 本作では、サーリャを通して、難民の人々のアイデンティティを巡る苦悩や、在留資格の問題について教えてくれる。サーリャの父のように、命が危険に晒されたら国外に逃亡するのは当たり前だろう。彼らはただそうせざるを得なかっただけで、もしも自分が同じ立場に置かれたら誰もが手を差し伸べてもらいたいはずだ。それにも関わらず、なぜそんな彼らを危険な国に帰らせようとするのだろうか。そんな制度は明らかに間違っていると知ることができる。

 また、私はクルド人のことも、クルド人のコミュニティが埼玉県にあることも知らなった。「国を持たない」ということがどういう感覚なのかを想像することは容易ではないが、本作を観て彼らが”クルド”を愛し、今でもその文化を大切にしていることを知った。帰る場所がないということは、どれほど辛いことだろうか。。改めて、映画の役割の1つは、自分と異なる環境に生きている人々の苦悩を知り、世界をより良くするためであると感じた。

 現在、世界がこのような状況だからこそ、今観るべき作品に違いない。