kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『そして、バトンは渡された』監督:前田哲

〇あらすじ(簡単に)

 高校生の優子(永野芽郁)には、2人の母親と3人の父親がいる。生んでくれた母と、実の父親の再婚相手で育てくれた母の梨花石原さとみ)。また、梨花が実の父親と離婚後、1人目の再婚相手であるお金持ちの泉ヶ原さん(市村正親)、2人目の再婚相手の森宮さん(田中圭)だ。梨花は、何年か前に家を出て行ったきりで、優子は現在森宮さんと2人で暮らしている。そんな複雑な過程で育った優子は、卒業式でピアノの伴奏をすることになったことをきっかけに、同級生の早瀬くん(岡田健史)と知り合いになり、好意を寄せるようになる。そして、明らかにある梨花の隠した過去の真実とは…

〇感想・見どころ ※ネタばれ含みます

①優しい人しか出てこない意外な人物設定

 優子のように、複雑な家庭で育った主人公というのは、曲がった性格だったり、社会から外れてしまったりする人物として描かれることが多いのではないだろうか。しかし、優子はちょっぴりクラスに溶け込めないところはあるものの、いつも笑顔で、心優しい普通の女の子である。また、3人目の父である森宮さんも、立ち位置的には、優子には愛情を注ぐことができない冷たい人物に描かれてしまわれがちだと思われるが、本作においては、優子のことを心から愛していて、ただ優子の幸せを願っている心優しい人物なのである。さらには、本作では悪者が一切出てこない。登場人物の全員が優子や誰かを大切に思っているのだ。このような物語は珍しいのではないだろうか。しかし、決して物足りないわけではない。これらの登場人物によって、本作を観ると、ただ純粋に愛について考えるというのも、たまには良いなと思わせてれる。

②受けつがれる”愛のバトン”に感動する

 最後の結婚式のシーンでの、森宮さんのメッセージに感動する。その内容は、普通の人よりも親の数が多い優子は、それだけ多くの愛情を注がれてきたということであり、また、5人もの親たちを幸せにしてきた優子の存在は尊いものであるということだ。親が複数いて普通ではないということを、大抵の人は悲観的に捉えがちだと思うが、そうではないということをこの作品は教えてくれる。また、タイトルの意味する”バトン”とは、梨花が懸命につないだ”優子への愛のバトン”だった。梨花が、心から優子を愛してたからこそ、泉ヶ原さんも、森宮さんも、優子を大切にしようと思えたのである。そのような”愛のバトン”が、早瀬くんへと受け継がれていくシーンは涙腺が緩むことまちがいない。梨花の優子への思いのように、愛というのは受け継がれていくものだと思うと、改めて親のことを大切に、また自分のことも大切にしなければということに気づかせてくれる。