kimmaのシネマブログ

映画とたまに本・ドラマの感想・自分なりの解釈について。あくまで1個人の意見です…

『すばらしき世界』監督:西川美和

〇あらすじ(簡単に)

ある事件を起こして、刑務所から出所した三上正夫(役所広司)が、彼のことをテレビでとりあげることになり取材にきたTVディレクターの津乃田龍太郎(仲野大賀)や、彼を支えようしてくれる人たちと出会うことで、更生しようと努める。

 

〇感想・見どころ ※多少のネタばれ含みます。

役所広司の演技が素晴らしすぎる!!

役所広司の演技に見入った。三上(役所広司)が登場してすぐに、「この人普通じゃないな、あまり近寄らない方がいいタイプの人だ」と思うほど、”三上”という男の雰囲気が溢れており、その存在をとてもリアルに感じた。また、三上が納得できない場面に遭遇した時に憤る姿は、画面越しでもゾッとした。

 

②現在の社会・生き方について考えさせられる。

この映画は、現在の社会・生き方について考えさえられ、学ぶことのできる作品であると思った。

具体的に作品から得たことは以下2点である。

 

②-1:人への偏見について

 物語の中盤まで、私は、三上に対して嫌悪感と拒絶反応を抱いていた。具体的には、彼のすぐかっとなり手を出すような短期な性格は、どれほど周りの人が影響を与えたとしても変えることなんて不可能だろう、だから彼は救いようがない人間であるということだ。

 しかし、津乃田(仲野大賀)や庄司(橋爪功)は彼を見捨てない。津乃田はなぜ今の三上があるのかを知ろうと努める。私は、三上が道から外れたことの原因が、彼の幼少期の体験が関連しているかもしれないと知ってから、三上に対する見方が変わり、彼に対して同情を抱くようになった。

 私たちは、他人のたった一面だけでその人を判断し、たった一面だけで全てを拒絶ることがあるのではないだろうか。しかし、この作品はそういった行動が原因となり、一度過ちを犯した人の更生が、現代社会でどれほど難しく、そのことが私たちと無関係ではないことを訴えている。私はこの作品を観て、これからは人に対して、特に自分と異なる考えを持っている人に対し、その人がどのように生きてきて、なぜそう考えるに至ったのかをできるだけ深く理解するように努めたいと思った。

 

②-2:私たちの生き方は本当に正しいのか??

 はじめは、三上は犯罪を犯した=誤った人、ダメな人だと思っていた。しかし、ラストの介護施設でのシーンでその考えに疑問を抱くようなる。誰かが悪口を言っていることに共感しなくても同感する、いじめを見て見ぬふりする私たちの方がよほど誤った生き方をしているのではないか?この社会でうまく生きていくことは、まちがったことに何も感じないようになることなのか?本当は三上の方が正しい生き方をしているのではないのか…?この作品は、現代社会で「正しく生きる」と何か、本当に私たちの生きる世界は「すばらしき世界」なのだろうか、ということを考える機会を与えてくれる。